「食べ過ぎ」と「過食」
使われている漢字が同じなので、どう違うのかわからないという人も多いかもしれません。
「食べる」という行為は、空腹を満たし、生きるエネルギーを得るという生理的役割以外に
楽しみを与えてくれる、そんな役割も担っています。
食べることが好きな人、食べ歩きが趣味の人、イヤなことがあるとやけ食いする人…
思わず食べ過ぎてしまったという経験のある人は多いのではないでしょうか。
「思わず食べ過ぎてしまう」、これは「過食」ではありません。
次のような状態がみられる場合、それは心や脳が疲れていたり、過食症の始まりかもしれません。
✅お腹が苦しくなっても食べるのを止められない
✅常に食べ物を口にしていないと落ち着かない
✅これまでの自分に比べて、明らかに食べ過ぎることが増えた
✅食べ物のことばかり考えてしまう
✅異常に食べ過ぎているのではないかと悩んでいる
では、「食べ過ぎ」と「過食」の違いはどこにあるのでしょうか。
違いはコントロールできるかどうか
「過食」は「過食性障害」という病気です。
診断基準もありますが、次のような状態があると病気としての対応が必要です。
・本人が精神的・身体的に強い苦痛を感じている
・食べ物の内容・時間帯・食べ方をコントロールできない
・生活や健康状態に明らかな支障が及んでいる
・食べ物にお金を使い過ぎて、経済的に困っている
・食べ過ぎた後に自分を責めたり、うつ状態になったりする
基本的に「食べ過ぎ」は健康によくないのですが、
たまにはおいしいものをお腹いっぱい食べて、それによってまた元気にがんばれるのであればいいと思います。
食べ過ぎが日常的になり、食べ過ぎる自分を責めたり、食べ過ぎた後にうつ状態になったり、
食べ物にかけるお金によって経済的に苦しくなったり、
食べることに時間と体力を費やして仕事や家事に支障をきたしているなどがあれば、
「過食」として対応する必要があります。
そして…
「食べ過ぎ」と「過食」のもっとも大きな違いは
「食べる内容や時間帯をコントロールできているか」です。
ふつうは自分の好きなものを好きな時間帯に食べると思います。
過食の人は、それができません。
衝動的に食べたくなり、そのとき、目の前に食べ物があると手を出さずにいられず、
ときには仕事中や外でもガマンできずに口に入れてしまいます。
精神的な不調を伴う、苦しい食べ過ぎの状態がある場合、
過食に移行する可能性が高いため、早めのケアが必要です。
過食の人の特徴
心の安全基地が安定していない(愛着障害)
親子関係(特に母と娘)がくっつき過ぎていたり、厳しすぎたりという特徴があります。
その結果、心の安全基地(土台)が不安定になり、対人不安や人に甘えられないなど
人間関係における生きづらさを抱えている人が多いです。
また、心の安全基地が安定しないことにより、自己肯定感が低く、自分がない人が多いです。
過食が続くことで自分への自信を失っていたり、
過食をしている自分を知られたり、食べ過ぎを指摘されるのが怖くて
人との付き合いを避け、引きこもりがちになってしまう人もいます。
誤った認知がある(認知のゆがみ)
周囲の期待・要望に応えなければならないと過剰適応になっていることも多いです。
身を削りながら、能力を120%使って期待に応えようと努力している人が多いです。
また、普通はイヤだという思い込みや親からの教えがあり、それを守ろうとしている人も多いです
白黒思考
正しいか間違っているか、善か悪か、食べるか食べないか…極端にしか考えられず、
曖昧さやいい感じ、が苦手な人が多いです。
過食は誰にでも起こりうる依存症
食べることには楽しみを与えてくれる役割がある、と最初にお伝えしました。
食べることには快楽を伴うため、麻薬やアルコール、ギャンブルなどと同じように
脳が食べることに依存することがあるのです。
甘いものを食べるとホッとしたり、イヤなことがあったときに食べ放題で憂さを晴らしたり
そんな経験がある人は多いのではないでしょうか。
自分の意志でコントロールできていれば問題ありませんが、
コントロールできなくなり、何らかの支障をきたすようになると「過食」になります。
食べるという行為は生きるために必要であることから、
誰にでも過食になる可能性がある、ということができると思います。
過食を治すには?
必要に応じて薬物療法、内科的治療などを行いますが、一番大切なのは心理的アプローチです。
心理的アプローチとしては、過食が何によって引き起こされているか、
自分を振り返ることが中心になります。
過食の症状をなんとかしようとしてしまいがちになりますが、
過食が精神的ななにかとつながっているかもしれないと客観的にみることがポイントになります。
過食の原動力となっている”何か”が見つかれば、それへの対処法を身につけたり、
ストレスを抱えやすい認知へのアプローチを行ったり、現実に解決できる問題に向き合ったり、
自分の感情を表現する練習をしたり…
自分の課題にひとつずつ取り組んでいくことで治していきます。
まとめ
「食べ過ぎ」と「過食」の違いは、”コントロールできるか”にあります。
精神的な不調を伴う、苦しい食べ過ぎの状態があるときは過食の前段階かもしれません。
過食の場合は、うつ状態などが併発していることが多いため、
まずは心療内科などを受診することをお勧めします。
そのうえで、心理的アプローチのため、カウンセリング、自助グループなどへの参加などを
検討していただくといいと思います。
精神的な不調を伴う、苦しい食べ過ぎの状態があるときや食べ過ぎが習慣化しているときは
カウンセリングなどにより、その状態の背後にある精神的な原因に対し
早めに対処することをお勧めします。
カウンセリングをお探しの方は、一度わたしのカウンセリングを体験してみませんか?