【豆知識】愛着障害とは

「愛着障害」という言葉を聞いたことはありますか?

「聞いたことはあるけど、よくわからない」という方や
「もしかしたら、自分も愛着障害かも」という方に向けて
「愛着障害」についてお伝えします。

<目次>

愛着障害の特徴

愛着とは? 愛着が大切な理由

愛着障害のパターン

愛着障害を克服する方法

愛着障害の特徴

愛着障害は、両親などの養育者との愛着形成がうまくいかなかったことで現れます

医学的には、「愛着障害」という言葉は「5歳以前」という条件がありますので、
大人が診断されることはありません。

しかし、子どもの頃の愛着障害が改善されないまま、大人になってから苦しむ人や
大人になってから自分は愛着障害なのではないかと気づく人は少なくありません。

大人の愛着障害の人の特徴は次の通りです。

✅人に受け入れられるか、人に嫌われていないか、いつも気になる
✅期待されたり、褒められたりするとプレッシャーに感じる
✅いつか見捨てられるのではないかといつも不安を感じている
✅親しい関係になることを避けている
✅人とぶつかり合う状況が苦手で、自分がガマンすることで事態の収拾を図ろうとする
✅自分の人生を自分で選択できず、人生に対する満足感が低い
✅人を信じたい、でも信じられないという矛盾を抱えている
✅自律神経や胃腸などに原因不明の不調が続いている

愛着障害にもいろいろなタイプがあるため、表れ方はさまざまです。
共通しているのは、愛着障害があることで生きづらさを感じているという点です。

また、大人の愛着障害は二次的にうつ病や心身症、自律神経失調症などになってしまうケースもあります。
ほかにも、自分が愛着障害を抱えているため、子どもとどう接していいのかわからない、
愛着障害の親を持つ人が自分の子どもを虐待してしまうなど
負の連鎖を引き継いでしまうこともあります。

自分の人生を生きるためにも、
負の連鎖を断ち切るためにも、
愛着障害の対処方法を学んだり、カウンセラーなどに相談することが大切
です。

愛着とは? 愛着が大切な理由

子どもと特定の人(特に母親)との情緒的な結びつきのことを「愛着」といいます。

愛着は人間関係の”土台”です。

愛着を土台に、その後の情緒的、認知的、行動的、社会的発達が進んでいくからであり、その土台の部分が不安定だと、発達にも影響が出ることになる

「発達障害と呼ばないで」(幻冬舎新書)

人は身近な養育者などとの愛着形成があることで、成長とともに周りとの関りを広げていくことができます。周りの人とも愛着を形成していくのです。

そして、この愛着関係が心の深いところに根付き、自立心や自尊心が育つことで
人間関係や社会性が発達していくと言われています。

愛着関係があることで、安心して外の世界に向かうことができ、
また、外の世界で傷ついたり、不安になったときに戻ることができる
のです。
愛着は、外の世界に向かうための「安全基地」ということができるかもしれません。

しっかりとした安全基地を持つことができた人は、
対人関係においても、仕事においても高い適応力を示します。
人とうまくコミュニケーションが取れるだけでなく、深い信頼関係を築くことができるのです。

愛着障害のパターン

愛着スタイルには「安定型」と「不安定型」があり、「不安定型」が愛着障害に該当します。

不安定型には2つのタイプがあります。
1つは、愛着システムの不活化、つまりうまく機能していないタイプ
もう1つは、愛着システムが過剰に活性化しているタイプ です。

不安定型の愛着スタイルを持っている人は、成人の1/3もいると言われており、
対人関係において困難を感じやすかったり、
不安やうつなどの精神的な問題を抱えやすくなっています。

この不安定型は「不安型」と「回避型」に分けることができます。
人によっては、両方を持っている「恐れ・回避型」の場合もあります。

不安型

不安型の人は、いつも周囲に気を遣い、相手の顔色や機嫌を窺っています。
少しでも相手の反応が悪いと、嫌われているのではないかと不安になります。

不安型の人にとって一番の関心ごとは「人に受け入れられるかどうか」
「人に嫌われていないかどうか」
にあります。

人を求める気持ちと拒絶する気持ち、両方を持っています。

幼いころから養育者に過保護に甘やかされる一方で、
意に沿わないと強く否定されるといった極端な環境で育っていることが多いです。
そのため、「甘えたい」「愛情を求めたい」と願いながらも
「またいつ否定されるかわからない」「拒絶されるかわからない」という気持ち
も抱いています。
愛情が無条件のものではなく、状況が変われば見捨てられるという不安を消せないのです。

期待されたり褒められたりすると、うれしい反面、
「もし相手の期待を裏切ったらどうしよう」とプレッシャーに感じてしまいます。

また、不安型の人は、パートナーが自分をどう評価してくれているかによって、
自分に対する評価が左右されます。
そのため、愛されていると感じると自分は価値ある存在だと思えますが、
愛されていないと感じた途端に自分が無価値になったように感じて
しまいます。

回避型

回避型の人は、距離を置いた人間関係を好み、親しい人間関係を重荷に感じます。
そのため、心理的にも物理的にも人と距離を保とうとします。

回避型の人の一番の願いは「縛られないこと」
人に依存しないし、人から依存されることもなく、自立した状態を最良だと考えています。

もうひとつの大きな特徴は、葛藤を避けようとすることです、
人と衝突することが苦手で、自分から身を引くことで衝突を避けようとします。
人と距離を保とうとするのも、葛藤を避けようとするためです。

一方で、葛藤を抱えきれず、ストレスが加えられると
短絡的に反応して攻撃的な言動に出やすいという側面もあります。
相手の痛みに無頓着なため、自分が相手を傷つけていることに気づきません

回避型の人は、たとえ愛するパートナーが苦しんていても、
それを自分の痛みとして共感しにくく、あくまでも他人事として
客観的にしか受け止めることができません。
そのため、相手にも自分の痛みを分かち合ってほしいと願う人が
回避型の人をパートナーに持つと、もどかしく物足りない想いを味わう
ことになります。

混合型(恐れ・回避型)

「不安型」と「回避型」を同時に持つタイプを「混合型」と呼びます。

人の反応に敏感で、見捨てられるのではないかという不安を抱えている面と
人と距離を置いて、縛られることや葛藤を避けようとする面
両方を持っている
ため、対人関係はより不安定になりやすいです。

ひとりでいると不安で、人と仲良くしたいと思う一方で、
親密な関係になることで強いストレスを感じたり、傷ついてしまうという矛盾を抱えています。
人を信じたいのに信じられないというジレンマでもあります。

自分をさらけ出すのが苦手で、うまく自己開示できない
でも、人に頼りたい気持ちも強い。
「不安型」の人のように器用に甘えられない
「回避型」の人のように距離を置き続けることもできない

親しい関係になって、相手を求めたい気持ちが強くなるほど、うまくいかなくなるのです。
相手の些細な行動も、自分を蔑ろにしているように受け取って、
信じられなくなってしまうのです。

愛着障害を克服する方法

愛着関係が築けなかった理由

愛着関係が築けなかった理由はさまざまです。

・幼いころに親に捨てられた
・親と死別した
・親と離れ離れに暮らさなければならなかった
・親から虐待をうけた
・親の離婚やケンカを目の当たりにした
・親が自暴自棄な振る舞いをしたり、自殺を図ろうとした
・再婚などで親の愛情がほかの存在に奪われた
・親が自分よりもほかのきょうだいばかりかわいがった
・親からいつも否定された
・親の都合や期待ばかり押し付けられた

愛着関係が築けていなかった、生きづらさの理由が愛着にあったのだと知ることで
気持ちが少しラクになる人もいます。

でも、愛着障害を克服するということは、愛着障害があるということを自覚して、
捉え方を修正すればいいという単純なものではありません。

克服への初めの一歩

愛着障害を克服するには、子どものころに不足していたものを取り戻すプロセスです。
心の安全基地を確保し、周囲から受け入れられるという共感的、体験的なプロセスが必要です。
自分の生い立ちや傷ついた経験と向き合い、封印してきた過去を整理し、
統合しなおす作業はつらさを伴います。
そのため、まずは心の安全基地を確保することが必要なのです。

また、同時に子どものころのイヤな気持ち、傷ついた思いを言語化するプロセスも必要です。
一度も言語化されることなく、イヤな気持ちや傷ついた思いが、
悲しみや怒りという強い感情と一体となって、心の中に膿のようにたまっているからです。
この2つのプロセスが並行して進むことで、克服への道が見えてきます。

2つのプロセスは、友人やパートナーを相手に行われることもあれば、カウンセラーの力を借りて行われることもあります。
否定的なことを一切言わず、丸ごと受け止めてくれる存在に、
自分の身に起きたこと、傷ついてきた思いを語りつくすことが重要
です。

振り返る力

愛着障害の人は、起きている問題自体から目を背け、見て見ぬふりをしたり
逆に感情的に過剰反応してしまい、かえって状況を悪化させてしまいます。

問題にしっかりと向き合うと同時に、客観的に事実を受け止め、過剰反応しない
そのためには「振り返る力」が必要です。

振り返る力は、状況を高いところから俯瞰するように眺める力と言い換えることもできます。

振り返る力がある人は…
相手の行動の背後にある気持ちを想像し、相手の行動を理解する(共感する力)
自分の行動を客観的に観察し、反省する(内省する力)

これらを事項することができ、他者との関係性を良好にしていくことができるのです。

自分が自分の親になる

愛着は人間関係の土台、「安全基地」であり、特定の人(特に母親)との関係で育まれます。
愛着障害は「安全基地」がうまく作れなかった結果として生じていますので、
愛着障害を解消するには、特定の人との関係を改善していくことがもっとも望ましいです。

では、特定の人の協力や助けが期待できず、代わりとなる存在も身近にいない場合、
どうすればいいのでしょうか?

1つは 「自分が自分の親になる」ことです。
自分が親として自分にどう接するのかを考えて、「自分の中の親」と関係を育んでいくのです。

2つめは、子どものころにうまく作れなかった「安全基地」を
他者との関係性によって補うことです。
相手の言葉を受け入れて応答し、共感を伝えることで他者との関係性が良好になり、
心の安定を図ることができるようになります。

「安全基地」がうまく作れなかったことを嘆いたり、言い訳にするのではなく、
自分で「安全基地」を作っていくことが愛着障害の克服には必要です。

心の安全基地を作るには、否定せずに、丸ごと受け止めてくれる存在に
子どものころのイヤな気持ちや傷ついてきたことを吐き出すことが大切です。

カウンセリングはどんなことを話してもいい、安心な場です。
あなたを丸ごと受け止めてくれる、そんなカウンセラーに話を聴いてもらうのも有効な手段です。

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