失ったもの

なにかを失ったとき
そこにあるのはぽっかりと開いた穴だろうか

空白をかなしむのか
空白を埋めるようにかなしむのか

そこにあったと感じているから
失ったことに気づく

失ったものは戻らないけど

穴のように
空白のように感じるところに
確かなものがある

自分の中に
存在し続けるなにかがそこにある

なにかを失っていたのだと
あとから気づくことがある

手にできるはずだと
そこあるはずだと
そう思われているものが
自分にはなかったのだと気づく

そこにあるのは
深く、暗い、大きななにか

今の自分を形作っている
なにかがある

失ったと思うことが
手にできなかったと思うことが
苦しいのかもしれない

どちらも自分の中にあって
失われていないと気づくとき
ほかのものを手に七得るのだと気づくとき

わたしはわたしに出会えるのかもしれない

わたしが歩んできた道は

わたしがこれから歩む道につながっている

決して途切れることなく

誰にも奪われることなく